「転入生の佐倉蜜柑さんです。みんな仲良くしてあげてねー」
「佐倉蜜柑です」
久しぶりに見るみんなの姿に、思わず笑みを零しそうになる
それでも・・・そう思うのは自分だけで
自分を見て“久しぶり”と言った反応を示す人は一人も居ない
反応すると言っても転入生という響きだけで
「アリスは何ですか」
「・・・・」
何故だか言う気になれなかった。心読み君に読まれないように、無効化で自分周辺のアリスを遮断する
別に言っても平気なんだろうが、それでも何故か言う気になれなかった
それに、無効化はまだしも、アリス盗みのアリスなんて皆にとっては要らないアリスだ
無効化だって・・・もう必要とされる場所なんて無いから
フェロモンをガードしたりだとかその程度しか使い道が無い
「読め」
以前聞いたときよりかは一層低くなっているが、当時の面影の残る声が発せられる
聞き覚えのあるその声につられ、聞こえる方向を見る
棗
近くに座る心読み君に命令して、きっと私のアリスを探ろうとしているのだろう
「あれ?読めないやー」
心読み君がそういうと同時にクラスはざわつく。
「何も読めないよ。ガードされてるみたいに」
「・・・鳴海先生、私はどこに座れば良いんですか?」
みんなの話を遮り、先生に問いかける
「そうだねぇ・・・蜜柑ちゃんの席はあそこ、棗君のと・・っったぁあああ」
「先生?どうかしましたか?」
思い切り先生の足を踏んづけると何事も無かったかのように言う
どうして鳴海先生は何時もこんな事ばかり考えるのだろう
「あぁ、うん。そうだね・・・あそこの飛田くんの隣の席が空いてるからそこに座って」
「分かりました」
鳴海先生は、蜜柑の今までの行動とかかわりのあった先生として丁度蜜柑たちと同じ歳の子達が中等部に上がると同時に一緒に中等部に上がってきたのだと、この教室に来る前に聞いた
みんなの記憶が消えたことに関して、記憶が戻らないように監視をするためだったらしい
「ありがと、先生」
先ほど言われた事を思い出すと、ボソリと先生にお礼を言う
先生には感謝しているから
「よろしくね、佐倉さん」
「宜しく、いいん・・・よろしくね、飛田・・くん」
委員長と、以前のように呼べたのなら
そんな思いに駆られる
君は私の事を覚えては居ないから
すぐに椅子に座ると、それ以上委員長の方を向かずに、黒板の方を向いた