考え事をする日が増えた
アイツを見ると調子が狂う
会話した事はなければ、一言二言交わすことすら無いというのに
「棗、眠れないの?」
「ちょっとな・・・流架こそ、どうしたんだよ」
「俺も少し眠れなくて」
考えているのがいやになり、気分転換に屋根の上にでも上って夜風に当たろうと外に出ると流架に会った
流架も向かう先は同じらしく、歩く道も同じになる
「・・・・?」
屋根に上ると先客がいるのか、人影が見えた
セミロングの甘栗色をした髪の毛が夜風にそよいでいる
存在しているのに今にも消えてしまいそうなその姿に思わず息を呑む
流架もそれに気づいたようだが、何も言ってこない
「・・・っ!」
少しの間目を放せずに見ていると、そいつと目が合った
その目は驚きによって見開かれ途端にその場でジャンプをする
「なっ・・・!?」
華麗にジャンプすると、地面に着地し、走っていった
意味が分からない
「・・・今のって」
「佐倉蜜柑・・・だよな?」
転入生の佐倉蜜柑
会話もしたことがないのにどうしても頭から離れない
消えそうだった今の姿が、自分の脳内から消えない
「・・・・アイツが来てから俺、なんかおかしいんだ。どうも目が離せなくて。なんでなんだろう」
棗は突然の流架のその言葉に驚いた
自分と同じ事を感じていたから
どうして、こんな感情を持つんだろう
不思議な思いは解決せぬまま、二人は静かに星空を眺めていた