遠くに少女が見える

その誰か分からない少女を自分は必死に追いかける

「待ちなさい・・・!待ちなさい−−」

その人の名前を必死に呼ぶのだが彼女は気づいていないのか、こちらを向いてくれない

それでも私は追いかけている

「・・・っ!−−待ちなさいよ。なんで、あんたが」

突然目の前に現れた柵によって、その人のいる方へ行けなくなってしまった

その柵の向こうで、その少女は苦しそうに顔を歪めている。

普段出さない大きさの声を出して、彼女の名を呼ぶ











「・・・何、今の」


夢よね?


そう思いながら蛍がふと頬を触るとその頬には涙が伝っていた

すごく辛くてたまらなかった。

確かに名前を呼んでいたはずなのに、名前が出てこない。誰なのかも分からないのに、苦しくて

ただ思い出せるのはその少女はツインテールで甘栗色の髪の毛をしていた。


顔はでてこない。

それでも何故だかあの少女の事を自分は知っているような気がした

思い出さないといけないような気がした








   佐 倉 蜜 柑






「・・・っ!」



彼女の、この間会話した時の泣き顔が脳裏に浮かぶ




追いかけていた少女は佐倉蜜柑なのだろうか

だがしかし、自分と佐倉蜜柑は最近出会ったばかりだ



一体何故彼女の顔が浮かんだのか


不思議に思いながらも、ボーっとしている暇は無くて

蛍は顔を洗うと急いで着替えて中等部の自分のクラスに向かった