「日向君じゃないの」
「・・・今井。なんの用だ」
フラフラと歩いていると唐突に声を掛けられた
「不思議に思うことがあって」
今井に話しかけられることは殆んど無い。そもそも接点が無いからだ
「・・・・ナルに、初等部の事を思い出せって言われたわ。馬鹿馬鹿しいと思いながらも思い返してみたのよ」
昨日鳴海に言われた言葉を思い出す
『・・・君のためでもあるんだ。ただ少しでいい。初等部のことを思い返して欲しい。何故かは言えないけど、初等部であった出来事を全部思い出して。そして疑問を見つけて欲しい』
コイツも同じように言われたのかよ。
だからと言って一体なんだと言うのだ
「疑問点を挙げていくわ。まず第一にレオに誘拐された時の事よ」
「・・・それが一体どうしたって言うんだよ」
「私は貴方達と通信を取ったわ。私が作ったイヤーマフラーで。でも私が日向君に渡すとは思えないし、だからといって正田さんに渡すとは思えない。何故あなた達が持っていたのか・・・」
言われてみればそうだ
何故そんなものがあの時にあったのだろうか
今井と関わりなんて無かったはずなのに、何故コイツはあの場で関わっていたのか
「・・・他にも沢山あるわ。いつだったか何故だか荒れていたクラスがドッジボールをやったり・・・もっと不思議なのは何故だか私と委員長が北の森に行って、流架君を捕まえたり貴方が怒ったりだとか、不思議にも程があるわ」
「・・・・」
確かにそうだ。それを言われてみればその年のアリス祭、自分は不思議な事に特別能力系のアトラクションに参加していたり、流架たち体質系の演劇に出たり等をしている
ありえない話だ
「私がZに打たれた時、Zを追って安藤翼と日向君、流架君でリスクの高い高等部に行きZを追いかけた。あなた達がワザワザそんな事をした理由は?」
「・・・・」
「あとはね、そうね姫花殿かしら。私とくっ付いていた流架君とよーちゃんは兎も角、何故男である貴方が一緒に来れたのかしら。それにその後、危険能力系とペルソナと戦って何故逃れられたのかしら?」
辻褄の合わない話ばかりだ
『疑問を見つけて欲しい』
鳴海の言葉が脳裏によぎる。
「・・・もしも、よ。もし他にも人が居て、その子の為にやっていたのだとしたら」
「全ての辻褄が、合うね」
「な、流架」
「盗み聞き?趣味が悪いわね」
「俺も鳴海に言われたんだ。初等部の事を思い出せるだけ思い出してってね。訳が分からなかったけど」
「・・・・記憶を消されているのだとでも言いてぇのかよ」
「そうよ」
初等部の時に起きた出来事に対する不思議
鳴海が何を言いたいかなんて分からないし、分かりたくもないが、だが疑問点を見つけると真実を知りたくなる
「・・・・もし、他にも人が居たとしたら私は、何故だか
『 佐 倉 蜜 柑 』
だと思うのよ・・・。何故だか知らないけど、彼女だとしか思えないわ」
接点の無いはずの彼女に覚える感情
彼女が来てから考える事が増えたのは、あいつが居たから?
「・・・・俺も、俺もそうだと思う。何故か佐倉は気になるんだ。アイツを見てると何か大切なモノを忘れているというか失ってしまったかのような不思議な感覚になるんだ」
「・・・流架君も、そう思うのね。やっぱり、彼じ・・っ!!!」
唐突に、今井は顔をゆがめた。
「今井どうし・・!?」
心配し始めた流架まで、頭を抑え、蹲る
一体、なんだって言うんだ
『・・・棗、何やっとるんやこんな所で』
「・・・っ!!」
頭に直接響いてきたその言葉と同時に、頭に激痛が走る。昔、任務の祭に付けられていた黒猫の制御面をしていた時のような頭痛。
そしてソレと共に来た体の重み・・・。
自分のアリスの所為で体調を崩していた、そんな時の苦しみが自分を襲う
「・・・何、コレ・・・」
「・・・・もしかして俺たち、3人とも・・なん、こんな・・・」
苦しさに耐えられず、3人はその場に蹲るしかなかった