「・・・・翼」

「かなめじゃん。どうしたよ」

やっぱり彼女の存在は本物だったと知ったから

感謝の意をこめて、一番信頼していたこの自分の親友の記憶だけは自分の手で戻してあげたいと思った

佐倉蜜柑という少女は別に自分とそこまで関わりがあったわけではないけれどそれでも助けられたから

大切な大切なベアの友人になってくれたあの少女が幸せになって欲しいと切に願う

「ちょっと、君の後輩について話があってね」

「・・・蜜柑のことだろ?」

あっけてしまった

一体どういう事だ

「この間、会って戻ったんだよ。最初は初めて会ったような気がしなかっただけなんだけどよ」

「そっか・・・」

自分が何かしなくても、いつの間にか彼は大切な後輩の事を思い出していた

翼らしい。だがそう思うと少し疑問が脳裏によぎる

「でもなんで、そのこと蜜柑ちゃんに」

「蛍ねーさんや棗、流架ぴょんが思い出してねーのに俺が思い出しても意味ねぇだろ」

「・・・・そんな事、無いと思うけど」

「そうだな、自分で言うのもなんだけど俺は蜜柑に好かれてたと思うし喜んではくれるとは思うな。だけどよ、なんか・・・まだ言っちゃいけないような気もすんだよな」

どこか別の場所を見ながら翼は言葉をつむぐ

「それで・・・ちょっと探ったんだけどよ・・・まだ、生きてるみてーなんだよ」

「え?」

一体何の事か分からないけれど、自分の親友である翼は真剣な目をしながら言葉を発してきた

「俺達の記憶を失わせた・・・っつーより封じたって言う方があってるのかな・・・まぁ記憶喪失にさせた、記憶のアリスを持ってる奴がよ」

「・・・じゃあソイツを見つけて記憶を戻させれば」

「あぁ、蜜柑の事を皆が思い出すさ」


見えた希望に一気に光が見えた気がした


「美咲やメガネも、皆が蜜柑を思い出したら盛大にパーティやろうぜ」

「そうだね」

大切な、後輩のために

彼女の笑顔の為に


それが救ってくれた君への恩返し