「・・・み、かん。やっと起きたのかよ」

「!!」

君の口から発せられる私を呼ぶ声に思わず息を呑んだ

「蜜柑、やっと起きたのね」

「遅いよ佐倉。皆、佐倉が起きるの待ってたんだよ」

「てめ、何時まで寝てるつもりだったんだ。人がどれだけ心配し」

「・・・何で、何でなん? 呪いが、記憶が、どういう事? 私なんで死んでないんや。呪いは簡単には消えないんやで? 諦めたから、苦しくないんじゃないん?」

疑問が、頭の中をぐるぐると駆け巡る。どうみても、単純に見て、彼らの記憶は戻っている。だけど、記憶が戻るということはのろいによって苦しめられる事と同じ事だ。

それなのに、何故その呪いが無くなっているのだろう

「アンタの先輩が、危険能力系の呪いのアリスのアイツに頼んだらしいわ」

「・・・翼、先輩が。なん、で・・あの人だって記憶」

「すぐ戻ったんだ。蜜柑に会ってな」

「!?」

ふと声のするほうに顔を向けると、開けられたドアの近くに寄りかかりながら翼がこちらを向きながら喋っていた

「お前が特力に戻ってきて、皆が思い出さない中、蜜柑の記憶が戻って・・・かなめが協力してくれたんだ」

もう、ここに居る資格なんてありはしないのに

裏の任務を多くこなし、人を殺め、もうこの人たちの記憶に戻る事なんて許されるはずはないのに


「蜜柑ちゃん、戻ってきなよ。皆、君を待っている」

「・・・いけない。私、やっぱり戻れない」

「どうして!? もう蜜柑が悩む事は無いのよ? みんなの記憶は戻ったわ」

「・・・やっぱり資格が、無いわ」

目を瞑ると、裏任務で始めたこなした光景が蘇る。アリスやナイフなどあらゆる手段の元人を傷つけ、殺めた。

任務をこなしていた数年間。その時の事なんて全然おぼえては居ないけれど。むしろ自分が何を思い出せないけれど、酷い事をしてきたのは確かだ

「・・・・そんなことねぇ!蜜柑は、みんなの為、俺の為に裏任務をしたんだろ?だったら、だったらそれは悪い事じぇねぇ。守りのための」

「そんなのはエゴよ。自分を守るためだけの予防線。私が、ウチが、人を殺したのは変えようのない、変えられない真実や!」

棗に言われた言葉が心に響く。だけどすぐさま別の事を思い浮かべ、その言葉を否定する

戻りたいという心の奥底の叫びに、棗の言葉に「うん」と首を縦に振ってしまいたい衝動にもかられている

「ねぇ佐倉。学園は・・・俺達のクラスは佐倉が出て行ってからすごく荒れちゃったよ」

「・・・る、か・・ぴょ」

「佐倉が転校してきて荒れていたクラスが良くなった。だけど佐倉が居なくなって再び荒れちゃった」

「皆・・・記憶が戻ってから時間を見つけては皆蜜柑のお見舞いに来てる。だからほら、こんなに沢山お見舞いの品が蜜柑に届いてるのよ」

指差された方向を見ると積み上げられた綺麗にラッピングされた箱やフルーツ、多くの品がそこにはあった。

「野乃子、ちゃん・・・アンナちゃん、いいんちょー、心読みくんにパーマも・・・ベアまで」

目の前が涙で霞む。堪えきれない涙は頬を伝い、ぼろぼろと零れ落ちる

「かえって来いよ、蜜柑。皆待ってる。・・・・俺も」

「俺も待ってるから」





「・・・私・・・うちっ・・・」


戻りたい。元いた場所に


「・・・・戻っていいの?」


「「「もちろん(よ/だ)」」」


流れ出した涙は、即答されたその言葉によって余計にあふれ出してくる


「じゃあそうと決まれば、皆に伝えないといけないね。ボクは教室でまってるクラスの子達に伝えてくるよ。ずっと蜜柑ちゃんの事を皆心配してるしね」

「俺も、かなめと特力の連中に伝えてくるわ。じゃあっあとでな」



人を殺めたという事実は消えない

それでも彼らが、一緒にいる彼らが許してくれる



今はそれだけで十分だよね?




私は君達と、皆と一緒に居たいから


大切な、大切な仲間の笑顔が


私の大切なモノが今ここにあるから



失い、閉ざされた道は、今此処に戻った