「棗、またこんな所で寝とんのか」

先生に探して来いとか言われたわけではないが、午前中に居た棗が昼休みになった瞬間居なくなったので気になって探してみたのだ。

別に、探さなくてもいいとは思うが、隣の人物が居ないのは嫌だと感じてしまう。

いつも棗を見つけるその場所に行くと、案の定棗はそこにいて眠っていた。

北の森のある木の下。棗が居るその木は、パッとみるだけでは人がいるなんて判断ができず、見事に人がいるのを隠している。

「・・・幸せそうに寝とる」

ちょっと探しに来て、声をかけるつもりだったのだが、この寝顔をみたら声をかける気をなくしてしまった。



気持ちがいい



蜜柑は隣に座り込むと、その気温の気持ちよさについ目を瞑る。

ギラギラ差し込む太陽の光は木が隠して、差し込む光は丁度いい具合に暖かい。吹き付ける風は丁度良く、気分が良い。

ちょっと目を閉じただけなのに、体は目を瞑るという動作がいけなかったのか、眠気を訴えだす。

起きて、授業に行かなければならないのに、重い目蓋は開けようとしても意思とは関係なく、体は言う事を聞いてくれない。

本人には何時間もにも思えた数分間の格闘の末、蜜柑はとうとう意識を手放した









ふと肩に重みを感じ、目を覚ます。

なんだろうと思い、重たいほうの肩を見ると、茶色い髪を二つに結んだ少女が肩に頭を乗せて眠っている。

「・・・んでコイツが」

何時ものように先生に言われて探しに来たのかと思い、時間を見ると、授業はもう数分前に始まっている。やっぱりそうか・・・とは思ったが、授業開始してから教室を出てここまで来たとなると、時間は少し早い。

先生に言われて来てないのだとしたら、なんでコイツは・・・

そんな事を思いながら、蜜柑を眺める。何時も見てしまう大きな瞳は今は閉じられているせいか、棗の目に留まるのは、ピンク色をした唇

「・・・・無防備すぎ」

そういいながら、棗はすこし痺れ始めた肩を楽にするために、すこし体を動かす。

「・・・ぅ・んっ・・」

棗が体を動かしたため、肩に頭を乗せ、寝ている蜜柑は進藤にすこし顔を顰め、目が離せない唇から、不快そうな声が発せられた。

ピンク色の唇からもれたその声は何時もの声とは違い、甘い声で、棗の理性はその瞬間吹っ飛んだ

愛らしい唇に、自分のそれを押し付ける。

「・・・んぅっ・・!!!」

唇に違和感を感じ、蜜柑が目を開けると赤い瞳と目が合った。

その赤い瞳の持ち主は、それに気がつくと口を離す

「・・・ちょ・・棗・・!?なにしてっ」

「水玉が、こんな所で無防備に寝てたからだろ?」

「な・・・っ!」

言われた瞬間、真っ赤に染まった蜜柑を見て、棗はニヤリと笑う。

蜜柑はその瞬間、それ以上に顔を赤くし、顔を背けた

「襲われに来たんじゃねーの?」

背けた顔を、強引に手で自分の方向に向けさせると、再び蜜柑の唇に自分の唇を近づけ、押し付ける。

「・・・ふぁ・・んっ」

先ほどの触れるだけのものではなく、棗は蜜柑の歯を舌でなぞり、蜜柑の舌を自分の舌で絡め取る。

「・・・ぁ・ん、っ」

最初は抵抗していた蜜柑も、舌で口の中を丁寧に舐め取られるその行為に酔ったのか、なされるがままになっている

長いその口付けに満足したのか、棗は口をゆっくりと離す。

だが、唇と唇の間には透明な糸がつながり、ある程度はなれたところで ぷつん と切れた

「なに、すんのや・・・」

頬を真っ赤に染めながら、蜜柑は棗に抗議する。だが、その表情は抗議しきれていなくて、逆に嬉しいといっているようなものだ

棗はその様子に満足したようで、立ち上がると蜜柑に言い放つ

「無防備に、男の隣で寝たりするからだ」

それから、棗は校舎に向かって歩いて行った









――終わり――――――

いやぁちょっと訳分からないけど無防備に寝ていた蜜柑が棗にキスされるっていうところが書きたかっただけです
これはちょっと続きというか、おまけというか・・・↓






棗が立ち去ったその背中を見ながら、蜜柑は動けないで木の下に座り込んでいた

舌を入れられ、口の中全体を舐め取られるように舐められた蜜柑の口は、離された瞬間、物足りなさが占めた

「・・・また寝てたらキス、してくれるんやろか」

口が寂しいとはこういう事なのだろうか

そう思った瞬間、チャイムが鳴り響く

「しまった、午後の授業終わってもうた!」

吃驚した蜜柑が時計を見ると、すでに午後の最初の授業は終わってしまっている。

蜜柑は急いで立ち上がると校舎に向かって走っていった。