長く続いた学園での生活もあと少し。

小学校から入学した蜜柑は初等部を2年、中等部が3年、高等部5年の10年アリス学園で生活した

もっと長くから学園で生活していた人たちから、もっと短い学園生活をした人たちまでさまざまだが、何年もの年月をこの学園で過し、外の世界に少しもでていない人物が殆んどで・・・

今までの思い出に浸れるひとから、早く家に帰りたいという人から、さまざまではあるが蜜柑にとってここは本当にいろいろあった場所である。蛍を追って学園に来て、ほんとうにいろいろあった。いやな出来事から、良い出来事まで数え切れないほどの事があった。

そんな事を思いながら学園を歩く

「蜜柑ちゃん。やっと見つけたー」

「野乃子ちゃんにアンナちゃん!」

気づけばここは初等部校舎前だ。高等部である蜜柑たちはこの場所に来る事が久しぶりになっている

「今日は日向君と一緒じゃないんだね」

「い、何時も一緒ってわけじゃないで!」

「そんな事言って、付き合ってから蜜柑ちゃんずっと日向君と一緒にいるじゃないの」

棗と蜜柑は付き合い始めてから一緒に居る時間は多くて、二人セットというイメージが強いのである

「今日はな、ここの場所をゆっくり見に来たかったんよ」

「・・・ここは思い出の場所だもんね。この学園に来た殆んどの人たちはこの初等部からだもん」

「そうやな。なんやいっぱいあったけど初等部のときの重いでは忘れられへん」

「そうよね。特に蜜柑ちゃんは、初等部のうちにいっぱい問題起こしてたものね」

「もー・・・。アンナちゃん言うようになったやんか」

今でも初等部での・・・此処に来て一年目のアリス学園での生活は思い出せる

「卒業だからこそ・・・別れだからこそ、ウチは出会った初等部に来たかったんよ」

北の森を見つめる蜜柑の目は、来てすぐ棗に出された北の森へ行くというテストを思い出しているのだろうか

「蜜柑ちゃん、思い出に浸るのは少し早いよー。あとちょっと、学校は通うんだから!」

「そうそう!」

二人に言われると、目線を二人へと向ける

「それでね、丁度此処誰も居ないし・・・・此処でいいや。蜜柑ちゃんにね、知らせようと思って」

「私も、蜜柑ちゃんとは卒業しても連絡取りたいし・・・」

「どうしたん?」

二人は顔を見合わせると、まず野乃子ちゃんが口を開いた

「私は学校でたら進学するって決めたの。私のアリス、薬でしょ?やっぱりずっと薬に関するもの触ってきたしもっと勉強したいなぁって。専門学校に進学しようと思って」

「そうなんや!ウチ、応援するで!」

「アリス学園にずっと居たから今更別の学校に通うのって怖いんだけどね」

彼女はいろいろ考えて、悩んで決めたんだろう事を伺える。言う言葉いう言葉が重要だ

「野乃子ちゃんなら大丈夫や!頑張ってな」

ニッコリ笑いながら応援すると、野乃子ちゃんも一緒になって微笑んでくれた

悩んで決めた事を認められたのは、嬉しいのだろう

「それでね、アンナちゃんはもっと凄いお知らせなんだよー」

野乃子ちゃんが本人よりも嬉しそうに言う

そのアンナちゃんは恥ずかしそうに、だけど嬉しそうにしている

「あのね、結婚・・する事になったの」

「ほんまー!?すごいやん。おめでとう」

「それでね、卒業式終わってから式の日が決まり次第連絡するから蜜柑ちゃんには出席して欲しいの」

「もちろん行く!アンナちゃん、倖せになってな」

「ありがとう蜜柑ちゃん」

結婚、か。棗とは一度もそういう話になったことが無いと、ふと思いつく

「他にも卒業と同時に結婚する子っていっぱい居るよね」

「そうなん?確かに他にも結婚しようか悩んどる子はいたけど」

そういえば、と蜜柑はセントラルタウンのジュエリーショップとか喫茶店で言ってる同学年の人たちを見かけている
棗は他の話なんかに耳を傾けてはいないのか、全く気にするそぶりを見た事はない

「それでなんだけど、蜜柑ちゃんは結婚しないの?」

「そうそう、私たちそれ聞こうと思ってて。あの日向君だから黙ってるのかなぁとかは思ったんだけど、蜜柑ちゃんに聞いたら分かるかなって思って」

「だって蜜柑ちゃんと日向君は他の誰よりも今では公認だし」

「卒業したらせめて同居とかはするのかなぁとかは思ってるのよね」

なんだか周りの考えにビックリした

「ウチは・・・ウチは全然そんな話してないんよ。同居とかも・・・」

「そうなの?てっきりそうなのかなって思ってたけど」

なんだかこの会話から離れたくてたまらなくなってきた。

普通の話に戻れば、いいのだけど

「でももしそうなったら私たちに教えてね!」

二人はそういうと、仲良く歩いていった




二人が居なくなって思うのはなんとなく憤りなのか悲しみなのか

あきらかに自分と棗のほうが長い事付き合っている。だからまぁ落ち着いて考えた今、確かに他の人から見れば結婚とかしてもおかしくはないだろう

そう思いながら蜜柑はいまだ北の森を見つめていた