放課後、棗は先生に呼ばれて職員室に行っている蜜柑を待つために、高等部に隣接している茶店で流架と話をしていた。
流架はいつも蛍と寮へ帰っているのだが、蛍は発明があるとかでさっさと作業室の方へ行ってしまったそうだ
「久しぶりだね、棗とこうやって話するの」
「そうだな・・・」
互いに、棗は蜜柑と、流架は蛍と付き合ってから二人っきりでいるとか言うのは減っていた。
「・・・俺さ、卒業して学園外の生活に慣れたら、結婚する事にしたんだ」
流架は、まだ決まったばかりの話を棗に話する。
「俺たちは学園での生活が長かったから、出てすぐに結婚生活っていうのは難しいだろ?だから、慣れてきたら、なんだけど」
「・・・・そうか、よかったな」
「うん」
あまり聞きたくなかったようなその結婚の話題に少し戸惑う。だけど友人の結婚の知らせというものはうれしいもので、純粋に祝福したい。
こんな風に思えるようになったのも蜜柑のおかげなんだよな・・・なんて思う
「それで・・・棗は」
「・・・買ってあるんだ。リング」
一番話しやすい彼に、自分の悩みを話を聞いてもらおうと口を開く。
「たぶん、そうだろうなとは思った。棗、自分の体の事気にして・・・」
蜜柑もだが、流架は自分の体の事をよく知っている。初等部に居た時からずっと体を気にかけてくれていた
「俺は、アリスを使いすぎた。だから」
「それでも、それでも佐倉は待ってるんじゃないの?」
「・・・・」
返答できない。流架の言葉は真実だと思ったから。
どんなに聞いてこなくても、本当は気にしているのかもしれない。
「・・・でも俺、この体がもつか分からねぇのに、言えねぇ」
「棗・・・」
「どうしたら良いんだろうな、俺」
棗の表情は曇っていて、虚ろな目をしていた。その目は流架ではなくどこか別のものを見ているかのような
「棗ー。あれ、流架ぴょんやないかー」
瞬間、元気な声によって棗の目には光が戻ってくる。
流架は一瞬安心する
「さて、佐倉も来たし、俺そろそろ寮に戻るよ」
「・・・分かった」
流架はそのまま何処かへ行った。
「何話とったん?」
「なんでもねーよ」
蜜柑の頭に手をのせて、撫でる
「なんでもないのに、話するんやな。不思議やー」
蜜柑は撫でられて嬉しいのか、顔が綻んでいる
「お前こそ、呼び出されて問題でも起こしたのかよ」
「そんな訳ないやろー?」
まだ、卒業までに時間はある
それまでには結論を出そう。