にぎわうセントラルタウン
卒業生の姿も数人見受けられる。最後の思い出作りなのか、学園外では売っていないような商品を持ち帰るためなのかは分からないけど、みんな笑顔で買い物をしている。
卒業生だけでなく生徒の姿は多く見えて、先生も歩いているくらいだ
「ウチ、ホワロン買ってくるな」
初等部のときからずっと好きで買っているホワロンも、いつのまにか味の種類が沢山増えている
なんとなく思い出に浸ってしまうのはもうすぐ卒業だからだろうか
「棗?どうかしたん?」
「・・・わりぃちょっと考え事だ」
「調子が悪いなら言ってな?」
真剣に考えに耽っていたようで、本気で心配してますといった表情で問いかけられた
蜜柑にはずっと笑っててほしいのに、自分がそんな顔をさせてはいけないじゃないかと
「・・・?」
ふと蜜柑が止まり、不思議に思って蜜柑を見ると、その蜜柑の視線はある一点を見つめていた。目線を追うとそこには沢山の指輪やネックレスが飾られているジュエリーショップ。
そこには、蜜柑と仲良くしている梅ノ宮アンナとその彼氏と思われる人が仲良くエンゲージリングコーナーを見ていた
「アンナちゃん、結婚するんやって。蛍と流架ぴょんと結婚するみたいやし、結婚する人はおおいんやなぁ・・・」
「・・・っ」
蜜柑から初めて結婚という言葉を聞いた。いや、クラスに居て友達と一緒に居る時は言っていたが、自分に向かって結婚に関する話題をしてきたのは初めてで、何故か苦しくなった
「棗・・・ウチ、あっちの雑貨屋行きたいんや。よって良い?」
「・・・ああ」
蜜柑が結婚について少しでも触れようとしたときの、棗の表情は蜜柑にはいつになく苦しそうで辛そうに見えて、蜜柑はとっさに嘘をついた。
たしかに気に入ってる雑貨屋さんが近くにはあるが、別に今日は行こうと思っていたわけではない
それでも棗にそんな表情してほしくなくて、蜜柑は嘘をついた。
その後の買い物は何故かやりきれなくて、気づいた時には二人とも何も言わなくても帰ってきていた。
「ウチ、ちょっとやらないといけないことあるんや。だから今日はもう部屋に戻るな」
「分かった」
何時もはそのままどちらかの部屋でゆっくりと過すのだが今日はそのまま各自の部屋へ篭ってしまった
自室のドアを閉めると突然涙が出てきた
何も言ってくれない
確かに彼はもともと口数の多いほうではないけれど、でも今は言葉が欲しかった。
なにも言ってくれない、彼のあの態度では、不安にしかならない。
もう、あとちょっとしかないのに
毎日会うなんて自宅が近くなければ無理だ。棗と蜜柑は近い場所に家は無い。一緒にいたければ一緒に暮らすしか手は無い
だからこそ結婚する人たちは多いのだ
蜜柑は声を殺して、泣き続けた