頭が痛い

起きてすぐ思ったのはそれだ

「うー・・・」

重たい体を持ち上げて、立ち上がる

すこしだるい。泣きながら眠ってしまったからだろうか。そう思うと風呂に入っていない事を思い出し、シャワーを浴びるべく着替えを持って歩く

シャワーを浴びれば元気が出るだろう


「すっきりしたー!」

シャワーし終わるころには、頭の痛みとだるさはほとんど減少していて気分が良くなった

ドライアーをかけ終わるとあと30分ほどで朝食の時間で、丁度いい時間だ。

寝てしまい、夕飯も食べ損ねてしまった蜜柑のお腹は空腹を訴えていて、今日は早めに行こうと授業の荷物を持って自室を出る





「・・・昨日、どうしたんだよ」

「え?」

棗がなぜだか不満そうに話しかけてきた。不満そうに見えるのは何時もの事だが、こんな目に見えて不満そうなのは久しぶりだ

「夕飯、いなかっただろ」

「あー。夕食の時間にな、丁度寝てもうたんや。ごめんな」

「・・・そっか。なら良い」

心配してる時の目だ。

蜜柑が夕飯の時間に現れなかったから心配していたのだ

棗は普段どおりに戻っていて、泣いた自分がバカみたいだと少し思ったが安心した。

それでも少しその態度は蜜柑には不安になってしまった。

けれども蜜柑は何時も通り笑い、その日を過した

「ねぇ蜜柑。ちょっと今から私の部屋にきなさい?」

「ええけど、どうしたん?」

放課後になると、蜜柑は蛍に突然声をかけられた。

そして、部屋に招待された。こんなの久しぶりである

「ちょっと、話があるのよ」

「うん、分かった」

蜜柑たちはそのまま直行した。

蜜柑は隣にいた棗に「蛍の部屋行くな」というと、蛍について部屋にまで行った

部屋に入り椅子に座るとそのまま蛍は話始めた

「ねぇ蜜柑、どうかしたの?」

唐突の質問に、蜜柑は頭の上に?を浮かべている。蛍が何を思ってこう聞いてきているのかまったく分からないからだ

「今日の蜜柑、無理して見える。・・・・日向君と何かあったの?」

「・・・ほた、る」

「私に、いえないこと?」

ずっと一緒に居た親友はなんでもわかってしまうのだろうか

初等部のあのころよりは自分も感情を外に出さないようにすることができていたとは思っていたのに、と蜜柑は思う

「ウチ、な・・・どうしようもなく不安なん」

ボソリと蜜柑は蛍に話し出す。

「棗に、愛されてないとはおもわへんよ。だって今日だって昨日夕飯食べにいかへんかったの心配してくれとったし、けど・・・それでも、不安でしゃーないねん」

「そっか・・・。だから最近の蜜柑は寂しそうな顔をしていたのね」

「それに、もうすぐ・・・卒業やろ? 蛍たちは、結婚するからいいけど、全然きまってへん。棗と今後のはなしできてへんのや」

蜜柑は歯止めが聞かなくなったかのように、蛍に自分の思いをぶつける

蛍はそれを何も言わないで聞いてくれた

「棗と昨日、セントラルタウン行ってな・・・アンナちゃんが彼氏とエンゲージリングみとって、ウチそのノリで棗にアンナちゃん結婚するし、蛍たちも結婚するし、結婚する人って多いんやなって言ったんよ。そしたら、棗・・・」

蜜柑の目には涙が溜まっている。それに気がついた蛍はハンカチを取り出し、蜜柑の涙を拭う

「な、つめ・・急に、機嫌悪くなってもうて・・・。ウチ、なんか悪かった?ウチは、せめてこれからどうするかって話したかったんやけど・・・棗はウチとこれからも一緒にいるのホントは嫌なんやろうか」

思っている事をすべて吐き出す蜜柑の表情はいつもの元気な表情とは正反対でものすごく暗い。

「棗はウチと結婚とか一緒に住むだとか嫌なんかな?何も言ってくれへんから・・・棗は口数おおい方やないけど、ウチが割るいんかな?何か、理由があるなら、言って欲しいのに・・・なぁ」

この子はこんなにも悩んでいたんだ

何考えてるのよ、日向君

蛍はそう思いながら、泣きじゃくる蜜柑の頭を撫でる


そのうちに、ドアのノックが聞こえた

「蛍・・・いる?」

声が聞こえ、蛍はドアを開けその人物を招き入れた

「俺、来なかった方がよかったみたいだね。後でまた」

「まって流架。蜜柑は貴方の友人の事で悩んでるの。流架なら何か知ってるんじゃないの?」

流架はそう言われると、蜜柑のほうを向く。この場所からは後姿しか見えないが、泣いている事は伺える

「何を・・・」

「なんで棗君、蜜柑に結婚申し込まないのか、流架なら知ってるんじゃないの?」

多少蜜柑の話とは語弊があるが、なんとなく蜜柑が悩んでいる内容と根本的なところから間違っているわけでもないし、泣いている蜜柑はつっこまなかった

「そういうのは本人に聞いたほうが良いと思うけど」

「聞けないから、悩んでるのよ」

「そうだろうけど・・・でも棗は結婚する気が無いわけじゃないのは確かだよ」

棗には悪いとは思いながらも話し出す。自分の一番の友人、棗の彼女である蜜柑がこんなにも悩み、その親友で自分の恋人である蛍がこんなにも頼んできているから少し話すことに決めた

「でも仕方ないんだ。棗は、自分の命の事をずっと気にしているんだ。もし佐倉と結婚してそんな体で大丈夫なんだろうかって。佐倉がそれで不幸になるんだったら、結婚しないほうがいいんじゃないかって」

蜜柑はその流架の言葉になんとも言えない感情になる

ならそうやって言って欲しかった

寡黙なのは、棗の良い所でもあるけれど、悪いところだよ。

「・・・ルカぴょん、ありがとうな。教えてくれて。蛍も話聞いてくれてありがとう。ウチ、もう大丈夫やから」

止まりかけた涙は再び流れていたが、頑張って二人に笑顔を見せる。

棗本人からそうやって聞きたかったなぁ

「・・・蜜柑!?」

立ち上がると、くらりと体が揺れる。だが倒れないようにふんばり、体制を整える

「大丈夫?蜜柑。調子でも悪いんじゃないの?」

「大丈夫や。ウチ、元気がとりえなんやで?」

また今朝の頭の痛みとダルさに襲われる。

蛍は手を伸ばしてきて、蜜柑の額に触れる

「蜜柑、熱があるじゃないの。病院、行くわよ」

「え・・・」



蛍に問答無用で病院に連れてかされ、診察を受ける

「・・・佐倉さん、妊娠してる可能性があるので一度チェックしましょう」

「え・・・」

蜜柑は本気でビックリしたといった表情で医師を見る。

一緒にいた蛍もビックリしたようで、蜜柑を見やる

そのままちょっとした検査をして、まさかと思いながらも医師の言葉を聞く

「佐倉さん、妊娠してますね。・・・年齢的には卒業生みたいだし、出産する事もできますよ。この様子ならお腹が膨らみ始めるのも卒業後ですし、まだお子さんが出来てから日が立ってないのでまだ考える事ができますし・・・」

「・・・・ほんまですか」

「彼氏と両親と相談して、おろすなら早めに、出産するのなら定期的に病院に通ってください」

蜜柑は百面相をしている。たぶん何も考えられないのだろう

蛍は今の蜜柑に何かを聞いても無駄ね、と思うと放心状態の蜜柑を引きつれ寮へ戻っていった