二人が別れたという噂は気づいた時には皆が知っていた。それだけに二人が付き合っていたというのは当たり前の話であって、信じられないことだった。
クラスメイトのほぼ全ての人たちは付き合い始める前、付き合ってからの二人を知っていて、あの二人が?という人たちが殆んどだ
「蜜柑ちゃん別れたって」
「本当や。だけど野乃子ちゃんたちが心配する事あらへんで?ウチは大丈夫や」
二人は絶対結婚するのだと想っていた野乃子とアンナは棗と蜜柑が別れたと言う話に本気で驚いていた
それでも蜜柑がこうして笑っているから、野乃子ちゃんもアンナちゃんも、大丈夫だと解釈して皆でおしゃべりをしている
「・・・・バカ」
そんな蜜柑を見ていた蛍は一言ボソリとつぶやくと、その場を静かに離れる
隣にいた流架はそんな蛍についていく
「蛍、佐倉はどうするつもりなの?」
「一人で、産むって言ってたわ」
「え・・・?本当に?」
「・・・蜜柑が自分から日向君に別れを言ったのよ?私はこれ以上何も言えないわ」
感情を抑えながら蛍は言う
一緒に病院に行った蛍はもちろん、流架も蛍に病院につれてかされる蜜柑を見ているから蜜柑が妊娠している事を知っていた。
流架は勿論、蜜柑が自分から妊娠している事を棗に話して、その上で別れる事にしたと認識している
「棗は、なんで別れをすんなり受け入れたんだろう。それに佐倉だって一人でなんて」
「もう、いいじゃない。蜜柑が決めた事だもの。それに日向君だって引き止めなかったんだから」
珍しく、蛍にしては弱気な発言だ
「私もう、蜜柑が苦しむ姿を見たくないのよ。蜜柑は日向君が大切で仕方が無くてずっと苦しんでて、やっと答えを見つけたのよ・・・?私は蜜柑をこれから支えてあげるって決めたから。ごめんなさい、取り乱してしまって」
そうやって言う蛍の瞳からは一筋の涙が流れ出ていた。
流架はその涙を指で拭うと、蛍の体を自分の方へ引き寄せる
「いいんだ。泣きたいなら泣いていいから、俺の胸なら貸すから・・・」
言葉を探す。この愛しい恋人は大切な友人のために泣いている。
支えてあげたい
どうして、こんな事になったのだろう
流架はそう思うと先ほどより少し強く蛍を抱きしめた